洪水ハザードマップ
洪水ハザードマップ
平成24年9月定例会(本会議)-9月26日
◆17番(弘瀬源悟)
昨年、紀伊半島を中心に甚大な被害を出し台風12号の襲来から1年余りが経過し、今月初旬には犠牲者の追悼や災害の教訓等について多くの報道がありました。この間、本年7月には九州北部豪雨、8月には寝屋川市で時間雨量130ミリを超え、1,200軒以上の床上浸水被害を出した近畿豪雨など、各地で洪水被害が頻発しております。
気象庁の降雨記録では、最近10年間で24時間降雨量が400ミリを超える豪雨が12回発生し、その前の10年間の2倍の発生回数となっており、豪雨の発生頻度が高まっているという私たちの実感を裏づけております。
豊中市においても本年9月14日には10分間で28ミリ、降雨強度に換算すると約170ミリの記録的な豪雨が観測され、市内の一部で床下浸水が発生しております。また、8月18日には大島町で10年確率降雨量を大きく超える時間雨量69.5ミリが観測されております。
現在、洪水被害は私たちの目の前にある脅威であり、市民の関心も高まっております。
そこで改めて、豊中市の洪水対策について質問させていただきます。
排水機場の健全性についてお尋ねします。
私は以前から、豊中市が作成しているハザードマップに内水はんらんを想定していないことの不備を指摘してまいりました。平成23年12月定例会では、内水はんらんが発生する要因として
1.計画降雨強度を上回る豪雨
2.排水機場のトラブルによる内水排除機能の喪失
3.排水機場の放流先河川の破堤や水位上昇による排水運転の抑制の3点を挙げ、上下水道局の見解を求めました。
このうち、内水排除機能の喪失に関するご答弁では、日常点検の実施と排水ポンプ複数台設置によるリスク分散、さらに自家発電機の設置により、排水機能を喪失することはないとのことでした。
ところが先日、この答弁を否定する新聞記事を目にしました。
それは、尼崎市で落雷による停電で排水機場のポンプが全て停止し、浸水被害が発生したことがあるという記事でした。
私は早速、尼崎市下水道部に足を運んで確認したところ、平成18年8月22日、豊中市が1時間110ミリの豪雨に見舞われていたときに、尼崎市でも猛烈な雷雨となっており、落雷によって北部浄化センターで停電が発生。さらに、何らかの原因で自家発電機も停止し、排水ポンプ駆動用ディーゼル機関等への冷却水給水ポンプが停止した結果、全ての排水機能を喪失したとの説明を受けました。
繰り返しますが、先ほどご紹介した自家発電機の設置により、排水機能を喪失することはないとのご答弁を否定する事故が、6年前に庄内下水処理場の近くで発生していたという事実があります。このことを教訓として、本市の排水機場の信頼性を検証する必要があります。
そこでお尋ねしますが、本市における重要な排水施設である庄内下水処理場及び全ての排水機場で同様の事故が発生する可能性の有無についてお聞かせください。
◎上下水道局技術部長(入川理)
ご質問のうち、庄内下水処理場など排水機場における事故発生の可能性についてお答えいたします。
ご指摘の尼崎市での事故について確認しましたところ、落雷により受電設備の一部に損傷を受け、自家発電機も一時的に停止し、排水機能が停止したと聞いております。
尼崎市とはシステム構成が異なることから単純に比較することはできませんが、庄内下水処理場におきましては受電設備の二重化等の対策に加え、自家発電機につきましても起動装置の充実を図っております。
万一、自家発電機が一時停止しても、排水ポンプの運転に必要な燃料や冷却水を確保しており、排水機能の喪失につながる可能性は極めて小さいと考えております。
また、他の排水機場におきましては、受電設備が1回線しかないことや、運転に必要な冷却水の確保など、処理場と比べるとリスクが若干増しますが、リスク軽減のための点検整備を行うとともに、不測の事態に対処できるよう、体制を整えております。
しかしながら、落雷をはじめ、想定外の自然災害もあることから、今後とも適切な維持管理に努めるとともに、情報収集やリスク管理にも努めていきますのでよろしくお願いします。
◆17番(弘瀬源悟)
3問目は要望です。
排水機場の健全性について、尼崎市における排水機能喪失の直接の要因である自家発電機停止の原因は調査中であり、その対策は未確定です。行政による安全宣言は油断のもとになり、妥当ではありません。
例えば、豪雨時に庄内下水処理場が排水機能を喪失すると、周辺地域は内水はんらんによる浸水被害が発生します。いずれにしても排水ポンプの故障をゼロにすることは困難ですが、洪水から市民の生命と財産を守るためには故障リスクを低減する不断の努力が必要です。そのためにも、国土交通省や下水道協会などの関連団体から積極的にトラブル事例の情報等を収集し、本市の設備に対照して検証し、対策を講じることが重要です。
例えば、今回例示したトラブル事例では、国土交通省等が推進する排水ポンプの設備の無水化、つまり冷却水がなくても排水運転可能な設備の導入が有効です。そして何より、突発的なトラブルに冷静かつ迅速に最適な対処ができるエキスパート職員の育成と技術の継承が極めて重要です。上下水道局における今後の取組みを要望いたします。
平成24年3月16日総務常任委員会
◆委員(弘瀬源悟)
新たな洪水ハザードマップについてお尋ねします。
私は、以前から、現在のハザードマップが内水氾濫を想定していないことの不備を訴え、内水ハザードマップの作成を提案してまいりましたが、先日の代表質問では、その作成に向け、浸水被害想定や下水道整備計画などをはじめとした前提条件について、上下水道局との間で具体の検討を始めたとの答弁をいただき、一定評価させていただくものです。
一方、下水道整備計画を内水ハザードマップの前提条件として検討していることに、私は疑問を持っております。東日本大震災をはじめとして、想定外の災害によって多くの人命が失われております。自然災害は避けられませんが、その災害による人的被害を最小化する減災のためには、想定を超えた場合のクライシスマネジメントの視点が必要と考えます。
下水道整備計画は10年確率降雨の内水排除をめざすものですが、10年確率降雨を超える降雨は頻繁に発生しますし、内水排除の心臓部での排水機場でも排水機能を失うリスクがあります。したがって、私は内水ハザードマップの前提条件から下水道整備計画を除外するべきと考えます。このことについて理事者の見解をお聞かせください。
◎危機管理室長(瀬古博也)
内水氾濫による被害を想定する場合に、下水道整備計画に基づき設置されております下水管の排水能力を評価する必要があることから、下水道整備計画は内水ハザードマップの作成に当たってその前提条件の一つであると考えております。
また、災害発生時において市民の皆さんが混乱を来すことなく正確、迅速な避難行動等をとることができるよう、ハザードマップにつきましては、的確な情報掲載とあわせてわかりやすい内容となるよう作成するとともに、出前講座等の機会を捉えまして、鋭意、周知啓発に努めてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
◆委員(弘瀬源悟)
陸前高田市では、市役所職員が市庁舎の前にある津波避難ビルに避難して津波の犠牲になりました。結果論ですが、誤った想定に基づいた避難が犠牲を生んだことになります。同じ過ちを犯してはならないと、強く思います。東日本大震災は1000年に1度の津波によってハザードマップが破綻しましたが、今豊中市が作成しようとする内水ハザードマップは10年に1度の降雨を超えれば破綻する可能性があります。だからこそ私は、市民の生命を守るためには、下水道整備計画を前提条件としない内水ハザードマップが必要だと主張しております。
一方、内水ハザードマップの作成を推進する国土交通省の手引には、私が主張する視点は含まれておらず、豊中市独自の判断で、下水道整備計画に基づかないハザードマップを作成することは困難であると理解をしております。
今後も調査検討と議論を重ねてまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
平成23年12月定例会(本会議)-12月20日
◆17番(弘瀬源悟)
洪水対策についてお尋ねします。
本年9月に相次いで襲来した台風12号と15号は、各地に大きな洪水被害をもたらしました。特に台風12号は、もう少しコースが西寄りであれば豊中市にも大きな被害が出た可能性がありました。
そこで、本市の洪水対策についてお尋ねします。
まず、避難勧告等の災害情報の伝達について。
私は、本年10月の委員会で、台風時に100万人以上に避難勧告を出した名古屋市で、浸水被害に遭った住民に対してNHKが行ったアンケート調査では、全員がスピーカーの音が聞こえなかった、パトロールカーによる避難呼びかけは多くの市民に伝わっていなかったことを紹介しました。一方で、避難勧告を知った手段として、第1位がエリアメールで27パーセント、第2位が広報車で21パーセント、第3位が知人からの連絡で18パーセントとなっていることを紹介し、避難勧告の伝達方法の1つとしてエリアメールの導入を強く要望しました。このことについて、改めて理事者の見解をお聞かせください。
次に、洪水ハザードマップについて。
現在の豊中市洪水ハザードマップは平成22年に改定されたものですが、私は以前から同マップには内水氾濫が規定されていないため、内水氾濫が発生した場合に市民が避難行動を誤る危険性を繰り返し指摘してまいりました。
そこでまず、内水氾濫発生のリスクについてお尋ねします。
内水氾濫が発生する要因として、計画降雨強度を上回る豪雨、排水機場の故障による内水排除機能の喪失、排水機場の放流先河川の破堤や水位上昇による排水運転の抑制などが想定されますが、このことについて上下水道局の見解をお聞かせください。
◎上下水道局技術部長(入川理)
上下水道局への3点のご質問のうち、排水ポンプ場の放流先河川の破堤や水位上昇による排水運転の抑制に関しましては、結果として内水氾濫が発生するものの、原因としては河川排除能力を上回る外水の発生によるものだと認識をしており、内水被害とは一線を引くものだと考えております。
そういう状況のもと、排水ポンプ場の運転につきましては、猪名川流域総合治水対策協議会の中で平成18年3月から専門部会が設立され、検討を行っております。部会の中では、堤防が破堤すれば運転調整はやむを得ないとの一定の理解を得ておりますが、運転調整を行う基準、例えば水位設定などの課題が多く、ルール策定には至っていないのが現状であります。
次に、内水排除機能の喪失につきましては、平成10年度末に見直しを行った新下水道計画に基づき、10年確率降雨を排除できるよう下水道管渠を整備するとともに、排水ポンプ場につきましても支障なく運転が行えるよう維持管理に取り組んでまいりました。
特に排水ポンプ場につきましては、内水排除における重要施設であることから、日常点検による機能の確保とともに、複数台のポンプを設置することによるリスク分散を行っており、また、万一の停電時にも機能損失のないように自家発電設備を設置しております。
最後に、計画降雨強度を上回る豪雨につきましては、下水道計画降雨を大きく上回っていることから浸水被害を完全に解消することが非常に難しいと考えておりますので、よろしくお願いします。
◆17番(弘瀬源悟)
本年10月の総務常任委員会で、今回と同様の質問に対し、危機管理室からは、内水氾濫による浸水被害想定は下水道幹線の整備によって大きく変わるので、上下水道局とも連携しながら、内水・外水それぞれを想定した新たなハザードマップの作成に向けた検討を行うとの答弁がありました。
一方、私が指摘した内水氾濫の可能性について、先ほど上下水道局から肯定的な見解が示されました。
そこで、1つの提案があります。下水道幹線の整備が完了しても、計画以上の降雨や排水機場の故障等で排水機能を喪失すれば、大規模な浸水が発生します。その最悪の状況を想定したハザードマップを作成すれば、市民の命を守るための有効な資料になると考えます。理事者の見解をお聞かせください。
以上で、2問目を終わります。
◎危機管理監(鈴木敏行)
洪水ハザードマップについてでございますが、ご指摘のとおり、下水道管幹線の整備状況を見据えながら内水氾濫も含めたハザードマップの作成を検討してまいりますが、自らのお住まいが浸水への備えが必要なエリアであるのか確認していただくことはもとより、浸水時におけます迅速・適切な避難行動を促す手がかりになるなど、市民にとりまして信頼性の高いツールとなりますよう、作成に当たりましては、浸水被害想定をはじめとした前提条件などにつきまして上下水道局とも連携を密にしながら検討してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
◆17番(弘瀬源悟)
洪水ハザードマップについて。
本年は、東日本大震災や台風12号、タイの洪水など、私たちは繰り返し想定外という言葉を耳にしました。例えば10年確率降雨を想定してのハザードマップは、その「想定外」の降雨時には市民の避難行動を誤らせることになります。本年、私たちが体験した災害の教訓を生かし、市民にとって的確な情報提供できるハザードマップの作成を強く要望いたします。
以上、防災対策について質問を行いました。
東日本大震災発生後、本市並びに豊中市社会福祉協議会をはじめとする市内諸団体、何より多くの市民がきめ細かな支援を行ってこられました。関係各位のご尽力に心から敬意を表します。
翻って、豊中市の防災力に進化はあったのでしょうか。昨日、淺利市長のご答弁にもありましたが、教訓を生かして豊中市の防災力を向上することが今求められております。危機管理室のみならず、市役所の全部局が当事者意識を持って防災力向上に取り組むことを強く要望し、公明党議員団、5番目の質問を終わります。
平成23年10月19日総務常任委員会(決算)
◆委員(弘瀬源悟)
洪水ハザードマップ改定業務について、改定の概要と経緯をお聞かせください。
◎危機管理室長(瀬古博也)
洪水ハザードマップ改定業務の概要でございますが、大阪府によります千里川の浸水想定区域の修正が行われまして、豊中岸部線より上流の区域が全て浸水想定区域から外れたことによることと、防災スピーカーを利用することにより避難勧告等の伝達方法が確立したことに伴う改定でございます。
次に、経緯でございますが、大阪府における千里川の浸水想定区域の指定につきましては、当初平成12年度末時点での千里川の水が流れる道筋の整備状況を勘案しまして、おおむね100年に1回程度起こる雨により氾濫した場合の浸水想定区域の指定でございました。
その後、平成19年度末の千里川の水が流れる道筋及び周辺地形の形状を考慮しまして修正が行われ、平成20年3月31日に新たな浸水想定区域図として告示されました。先程申しましたように、豊中岸部線より上流の区域が全て浸水想定区域から外れたことによる告示でございます。
このことにより、本市が作成する洪水ハザードマップの改定が必要となったものでございます。よろしくお願いいたします。
◆委員(弘瀬源悟)
ご答弁に対して2つの大きな疑問があります。
1点目、避難勧告等の伝達方法が確立したことに伴う改定とのことですが、本当でしょうか。
先月の台風15号で100万人以上に避難勧告を出した名古屋市は、2000年9月の東海豪雨の教訓から避難勧告マニュアルや防災スピーカーも整備されておりましたが、浸水被害に遭った守山区下志段味地区の住民130人に対してNHKが行ったアンケート調査では、全員がスピーカーの音が聞こえなかったと回答しております。また、パトロールカーによる避難呼びかけは、多くの市民に伝わっていなかったことも報道をされております。
豊中市では、この教訓をどのように捉えておりますか、認識をお聞かせください。
2点目、大阪府が平成20年3月31日に告示した新たな浸水想定区域図との整合を図るための改定とのことでありますが、新旧のハザードマップを比較すると、例えば過去に何度も浸水被害を経験した千里園1丁目が浸水想定区域ではなくなっています。ただ、この地域の過去の水害は内水はんらんによる浸水です。ハザードマップを見た当該地域の住民が、我が地域は浸水被害のリスクはなくなったと誤解する懸念はありませんか。
その結果、いざ内水氾濫が発生したときに住民が油断して、避難のタイミングを誤ることを私はおそれます。この点について見解をお聞かせください。
◎危機管理室長(瀬古博也)
避難勧告の呼びかけが市民に伝わらないとのお尋ねですが、本市としましても広報車両は範囲が限定され、ルートに左右される、ケーブルテレビやラジオは視聴できる、または視聴している人に限られる、ホームページは使い方を知らない人がいるなどといった問題点があることは以前から認識しておりました。
そこで、半ば強制的に瞬時に広域に一斉に伝達するツールが必要であると考え、避難勧告等を呼びかけるサイレンにつきましてはほぼ市全域を音達範囲とするように設置しました。
音声は、市域全体に伝わるとは限りませんので、豊中・池田ケーブルネットのコミュニティチャンネル、FM放送、市のホームページ、大阪防災ネット、自動応答の電話のほか広報車両による伝達など、発信の手段を幅広く整備をしております。ケーブルテレビやホームページなどによる確認が困難な方には、自動応答の電話で対応させていただきますことを広報誌や出前講座などで周知を図っております。
次に、2点目のご質問でございますが、改定をいたしました洪水ハザードマップは、外水氾濫による浸水想定区域を示したもので、内水氾濫を想定したものではございません。
しかしながら、近年各地で発生している集中豪雨が主な原因で排水ポンプや下水道では一定の水位を超えると雨水があふれ出し、一定の区域で浸水する都市型災害とも言えます内水氾濫の可能性があることにつきましては、平成18年8月の豪雨の経験からも十分認識しております。そのため、出前講座などで内水氾濫の特徴などにつきましても理解を深めていただく取組みも考えております。
また、内水氾濫による浸水被害想定は、下水道管幹線の整備により大きく変わりますことから、上下水道局とも連携をしながら内水、外水それぞれを想定しました新たなハザードマップの作成に向けた検討を行ってまいりますので、よろしくお願いいたします。
◆委員(弘瀬源悟)
先程ご紹介したNHKのアンケート調査では、名古屋市で避難勧告を知った手段として第1位がエリアメールで27%、第2位が広報車で21%、第3位が知人からの連絡で18%等となっております。
避難勧告の伝達方法の一つとして、豊中市はまだ導入しておりませんがエリアメールの導入を強く要望いたします。ご検討ください。
次に、先日の台風12号、15号の教訓から洪水ハザードマップへの関心は高まっております。市民に誤解を与えることがないよう丁寧な啓発を強く要望するとともに、本年度作成される市民向けハンドブックを活用した十分な啓発を要望いたします。
平成21年9月定例会(本会議)-9月25日
◆2番(弘瀬源悟)
初めに、豪雨災害時の避難のあり方についてお尋ねします。
本年8月9日、兵庫県佐用町は台風9号による豪雨に見舞われ、多くの犠牲者が出ました。心からお悔やみを申し上げます。
とりわけ痛ましいのは、避難所に向かう途中で増水した河川や側溝に流され、3世帯8人の方が亡くなったことです。この豪雨災害は多くの教訓を私たちに示してくれました。その中から、今回は豪雨災害時の避難のあり方について、本市の体制等をお尋ねします。
佐用町の豪雨における避難について、行政の避難勧告のタイミングや市民への広報が適切であったか、住民の避難行動が適切であったかという問題点が指摘されております。避難勧告のタイミングでは遅きに失したという指摘があり、また、大雨の音で避難勧告を聞き逃した住民がいたことも報じられております。住民の避難行動では、避難途中で流されて亡くなった方がいる一方、逃げ遅れて、仕方なく自宅の2階に避難した結果、助かった方もおられます。避難行動が生死を分けたことになります。
そこで、豪雨災害時の住民の避難に関する本市の体制について何点かお尋ねします。
1点目、避難勧告や指示の発令手順と市民への伝達方法。
2点目、浸水被害が発生した近年の豪雨災害時に避難勧告や指示が出された事例があれば、その概要。
3点目、住民の避難行動について、従来の啓発内容。
4点目、豊中市内には、住民の避難経路途中の川や水路に増水時の転落を防止するための防護柵等がない箇所が存在します。このことに対する市の認識。
以上の4点についてお聞かせください。
次に、豊中市の浸水対策についてお尋ねします。
本市では雨に強い下水道をめざして、平成11年に降雨確率年を5年から10年に見直した新下水道計画を策定し、浸水履歴のある箕輪、千里園地区等の浸水被害の低減を図るため、基幹となる幹線等の整備を進めてきました。その結果、平成18年8月22日の大阪府北部豪雨災害において、箕輪地区では浸水被害が報告されておらず、また、千里園地区でも広範囲にわたっていた浸水地域が大幅に減少しており、地域住民から安堵と感謝の声をお聞きしております。この間の関係各位のご努力に改めて感謝を申し上げます。
一方、本年2月に上下水道局が発表したとよなか水未来構想には、めざすべき将来像として、「快適な暮らしとまちづくりを支えます」とうたわれ、その施策の1つに浸水対策が掲げられました。そして、本年3月に発表された第1期実行計画では平成23年度までの3年間に実施する下水道管の整備が明記されており、実績として雨水整備率が80.3パーセントとなっております。このうち10年確率降雨に対する整備実績が6.4パーセントとなっており、残りが5年確率降雨に対する整備となります。
私が今回問題を提起したいのは、下水道管の未整備地域や5年確率降雨で整備されている地域の中には、件数が少なくても頻繁に浸水被害に遭っている市民がおられるという事実です。市民サービスには公平性が求められますが、10年確率降雨で整備された地域にお住まいの市民とそれ以外の地域にお住まいの市民の間で浸水対策という市民サービスの公平性は、残念ながら現時点では担保されていないと考えます。未整備地域等で頻繁に浸水被害に遭われている市民への何らかの対応が必要であると思います。そこで、4点にわたってお尋ねします。
1点目、未整備地域等で頻繁に浸水被害に遭われている市民が自宅等の浸水対策として角落としと呼ばれる止水板や排水ポンプを自費で設置している事例がありますが、市として助成金を出せないでしょうか。他市の事例の有無を含めてお聞かせください。
2点目、未整備地域等で頻繁に浸水被害に遭われている件数が把握できていればお聞かせください。
3点目、下水道管の整備には莫大な時間と費用が必要ですが、既設の古い管の流下能力を比較的安価に現在より高める方法がないでしょうか。例えばとよなか水未来構想では、下水道管の継ぎ手部から侵入した木の根が原因となる閉塞が紹介されておりますが、この閉塞を改善するだけで流下能力は回復します。上下水道局では計算上の流下能力をもとに、現に浸水被害に遭った市民の方に下水道管の能力不足ですと説明をしますが、その計算の根拠である管内面の粗度や平均流速などの現状を調査確認する必要がないでしょうか。
この観点から1つの提案があります。従来、豊中市が計画的に進めてきた下水道管の管内調査について、本年3月の建設水道常任委員会での私の質問に対し、「供用開始の早かった排水区を中心に調査を行い、この調査結果をもとに更新計画を作成」との答弁がございましたが、この調査対象地域に浸水被害地域を加えて管内面の調査を実施することを提案しますが、いかがでしょうか。
4点目、浸水被害に遭った場合、市民税減免等の経済的支援が必要と考えますが、現在の支援制度についてお聞かせください。また、その中で豊中市独自の支援制度があればお示しください。
◎危機管理監(梅田幸治)
豪雨災害時の住民避難に関するご質問にお答えいたします。
まず、1点目の避難勧告や指示の手順でございますが、豪雨などによる避難の呼びかけは、避難準備情報、避難勧告、避難指示の3段階ございます。このことを適正に発令するため、収集した情報を総合的に把握、確認する風水害対策本部会議を開催し、会議の結果、市内の広域にわたり避難勧告などを発令する場合は速やかに災害対策本部に切り替えるともに、必要な職員を招集、確保し、避難所の開設、広報などの体制を整えることとなっております。
また、避難勧告など市民への伝達方法につきましては、広報車による伝達、戸別訪問による伝達、自治会等の応援による伝達、広範囲にわたる場合は、必要に応じて報道機関などに要請することとなっております。
2点目の近年の豪雨災害時での避難勧告などの事例でございますが、床上や床下浸水などの被害は何度がございましたが、ここ十数年、避難勧告などの発令実績はありません。
3点目の住民避難行動についての啓発内容でございますが、まず、平成17年度に作成いたしました洪水ハザードマップの活用がございます。市役所、庄内・新千里の両出張所、サービスコーナー、消防本部、消防署と各出張所にて配布し、市のホームページでも見ていただけるようになっております。市民の方が自分の地区の避難場所はどこなのか、川や橋を越えずに安全に行くためにはどう行けばいいのか、避難時の心得はなど、確認いただけるようになっております。
洪水ハザードマップを活用した防災出前講座におきまして、避難の際の注意といたしまして、家の前にある程度の水が流れている場合、避難所へは避難せず、垂直避難ということで自宅の2階や近隣のマンションなどに一時避難していただくことなどを啓発させていただいております。また、毎年の出水期前に、風水害に対する備えや行動をお知らせしているところでございます。
4点目の市内における増水時に住民避難経路途中の川や水路に転落防止柵がない箇所についての市の認識でございますが、市が管理しております水路の延長は約90キロメートルで、そのうち道路と並行している水路の延長は約9キロメートルでございます。本市では交通安全上の対策として、水路と平行した道路は、計画に基づく歩道化並びにガードレールや転落防止柵を設置しておりますが、一部では水路に並行して家屋が連続して建ち並び、出入口が多く現存するなど、沿道条件から未整備の箇所も存在しております。
お尋ねの佐用町のような豪雨災害が発生した場合、本市の水路への安全対策の認識でございますが、現時点では国、府などから佐用町の豪雨災害に関する情報や資料の提供はございませんが、可能な限り情報収集と分析に努め、危険と判断する箇所につきましてはどのような対策を講じることが望ましいか、関係機関と調整を図るとともに、補助採択も視野に入れ、検討を行ってまいりたいと考えております。
◎上下水道局技術部長(向川隆)
浸水対策にかかわります4点のご質問についてお答えいたします。
まず、1点目の止水板や排水ポンプの助成に関してでございますが、個人で対応していただく浸水対策として、道路面からの雨水侵入を防ぐ止水板の設置や排水ポンプの設置、さらには雨水貯留施設の設置が考えられます。助成金につきましては、止水板や排水ポンプの助成事例はあると仄聞しておりますが、自治体の数など詳細については把握ができておりません。なお、環境対策との両面から、宅内雨水貯留につきましては、本市を含めまして助成を行っている自治体が多数ございます。
また、各個人で止水板や排水ポンプを設置して浸水対策を行う場合、地形や隣接する住宅の状況にもよりますが、地区としての合意形成が不可欠で、場合によっては新たな浸水被害を引き起こすケースも考えられます。したがいまして、現時点で助成金制度の導入は考えておりませんが、今後も引き続き他市の状況を調査研究してまいります。
今後も下水道管の能力向上及び流出抑制対策を基本とした浸水対策を推進する中で、止水板や排水ポンプなどの助成制度につきましては国、府の補助制度の活用も検討しながら取り組んでまいりたいと考えております。
次に、2点目の未整備地域などで頻繁に浸水被害に遭われている件数でございますが、そのほとんどが10年確率降雨の下水道管未整備による能力不足により浸水被害が頻繁に発生している地域であり、現在把握しているところでは、上野西、本町、熊野町などの地区がございます。また、件数につきましては、各地区とも一、二件ほどと認識しております。
3点目の下水道管の管内面調査についてでございますが、ご指摘のとおり、下水道管の継ぎ手部からの木の根の侵入や、管内で発生した硫化水素によりコンクリートが腐食し、内面の滑らかさがなくなった下水道管は排水能力を十分発揮できなくなります。これに対応して、従前より合流管並びに分流汚水管に対して下水道管内のカメラ調査を実施しており、木の根の侵入など流下能力が低下しているものにつきましては、順次修繕工事を実施しているところです。
一方で、上下水道局では更新時期を迎える膨大な既設下水道管の維持管理、更新を一体的にとらえて、事業の平準化及びライフサイクルコストの最小化を図るため、平成22年度から計画的に既設下水道管のカメラによる内面調査を行い、下水道長寿命化計画の策定を予定しており、この計画に基づき、既設下水道管の健全化、延命化に対応してまいります。
この内面調査は、ご指摘の下水道管内面の状況や木の根の侵入状況などの把握を行うもので、浸水被害地域も含めて調査を実施し、下水道管の流下能力の向上についても対応してまいりたいと考えております。
4点目の浸水被害を受けられた市民の皆様への支援制度についてお答えいたします。
居住する家屋が床上浸水の被害に遭われた方と事業用資産に損害があった事業所を対象に共通する制度といたしまして、被災証明書の発行、災害による損失の確定申告、災害によるごみの収集と消毒があり、ごみの収集と消毒は、床上、床下浸水にかかわらず対象となります。
居住する家屋が床上浸水の被害に遭われた方に対する制度といたしましては、災害見舞金などの援助制度、市税・国民健康保険料の減免、児童生徒の就学援助制度、府立高校、工業高等専門学校在学生の授業料減免の制度がございます。また、事業用資産に損害があった事業所に対する制度といたしましては、大阪府・豊中市あっせん融資制度がございます。全般的な制度案内は危機管理室が行うとともに、個別具体的な支援につきましては関係部局が対応することとなっております。
また、浸水被害を含め、地震などの自然災害や火災などにより一定の被害を受けられた市民の皆様への豊中市の支援制度といたしましては、災害弔慰金の支給等に関する条例、同施行規則並びに災害見舞金等支給規則により定められております。その他、災害救助法が適用される大規模災害時には、被災者生活再建支援法に基づく支援制度も整備されておりますので、よろしくお願い申し上げます。
◆2番(弘瀬源悟)
豪雨時に避難勧告を発令した場合の市民への伝達方法についてですが、豪雨災害が予測される場合、災害対策本部設置後に避難勧告を発令し、広報車、戸別訪問、自治会等の応援による伝達を行うとのご答弁について再度お尋ねします。
1点目、本年度予算で設置するデジタルMCA同報通信システムはどのように活用されるのか。
2点目、自治会等の応援による伝達について、ある自治会長にお聞きしたところ、そのような体制は市から聞いていないとのことでしたが、これから自治会との調整を行うのか。
以上、2点について見解をお聞かせください。
次に、豊中市の浸水対策についてですが、10年確率降雨に対する下水道管未整備地域等で頻繁に浸水被害に遭われている市民が自宅等の浸水対策として止水板や排水ポンプ等を設置する場合の助成制度について、前向きなご答弁をいただきました。地域住民の合意形成等の課題解決は不可欠です。引き続き他自治体の事例などの調査研究をお願いいたします。
下水道管の管内調査について、調査対象地域に浸水被害地域を加える提案を受け入れていただき、安心いたしました。浸水被害が頻発する上野西、本町、熊野町等の地域については極力早い時期に調査をしていただくよう強く要望いたします。あわせて、その調査結果について市民から問合わせがあった場合には丁寧な説明をお願いいたします。
また、私の試算では、例えば口径800ミリの下水道管の管更生を行った場合、管内面の粗度が改善される結果、下水道管流量が工法によっては1割から3割程度増加します。財源との関係もありますが、管更生を含む長寿命化計画の対象管として、浸水被害発生地域の下水道管を積極的に対象とすることを要望いたします。
浸水被害に遭った市民への支援制度について、さまざまな制度があることを示していただきました。私自身、中学生のときに高知市内で2年続けて床上、床下浸水を経験しました。洪水は凶暴で理不尽です。そのときお見舞いにノートと鉛筆をいただきましたが、それだけでも本当にありがたかったことを今でも覚えております。市民のために支援制度を適切に丁寧に運用していただくよう関係各部局に要望いたします。
◎危機管理監(梅田幸治)
災害対策に関しますご質問にお答えいたします。
1点目のデジタルMCA同報通信システムの活用についてでございますが、過去の他都市での災害におきまして、避難の呼びかけをしようとした広報車が路面冠水により高台地区にしか回れず、最も情報を伝達しなければならない地域に伝達できなかった例や、電話や訪問で避難勧告したが、多大な時間を要し、情報伝達が間に合わず死者が発生した例など、同報系防災行政無線が未整備であった市町村におきまして痛ましい人的被害が生ずるという事例がございました。
当市におきましても10分間に1メートル以上の水位が上昇する河川があることから、同じようなことが起こる可能性がございます。そのようなことが起こらないようにするため、デジタルMCA同報通信システムを活用し、スピーカーやモーターサイレンにより避難勧告など災害情報の伝達を迅速かつ確実にするものでございます。
2点目の自治会等の応援による伝達についてでございますが、他都市での避難勧告等の発令時の避難率は決して高いものではございません。行政からの避難の呼びかけがあっても避難所へ避難すべきかどうか決断できず、結果、避難時期を逸してしまうという事例が多く報告されております。避難勧告等を行う際、常時自治会等に応援依頼をするわけではございませんが、災害状況により自治会等の応援を得、近隣住民間で声をかけ合い避難した方がよい場合には、協力を要請することといたしております。
次に、戸別受信機の購入補助等の検討についてでございますが、今回導入を予定しておりますスピーカー及びモーターサイレン方式によりますMCA同報通信システムにおきまして、導入後、戸別受信機を設置したいなど市民ニーズが高まりましたら、その対応について検討してまいりたいと考えております。
また、聴覚障害を持たれる方の対応につきましては、ふだんの生活の中での家族や近隣住民の支援体制構築のほか、災害情報等の携帯メールの配信制度の活用がございます。妊産婦や障害者など、いわゆる災害時要援護者と言われる方も含めまして、現在、市内で約2,500名の方が利用されております。今後とも引き続き登録、活用を勧めてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
◆2番(弘瀬源悟)
初めに、豪雨災害時の避難のあり方についてですが、避難勧告や指示の発令手順については、台風接近時など事前に大雨が予測できる場合の対応であり、近年たびたび発生するいわゆるゲリラ豪雨のときには機能しません。この十数年間に市内で浸水被害が発生したゲリラ豪雨は複数回ありますが、この間に避難勧告が発令された事例がないことがこれを裏付けております。
また、群馬大学大学院、片田教授は、
「豪雨災害時の避難のあり方が問われている。我が国は自治体の避難勧告などの情報に従い住民が避難することを基本としているが、これが必ずしも住民の命を守ることにつながらない事例が頻発しているからだ」
と指摘をしております。
その上で、佐用町を含む幾つかの事例を挙げ、災害対策基本法に基づき行政主体で進められてきた我が国の防災は、制定当時の毎年数千人単位の災害犠牲者を激減させたが、災害犠牲者をゼロにするには、行政主体の一律で面的な防災に限界が生じている。そして住民には、各自の居住環境に応じた的確な避難方法で、自ら命を守り抜く自助意識が求められていると結論づけております。
したがって、重要なことは、住民が自らの判断で避難をすることです。洪水ハザードマップには、避難が遅れた場合は高いところへの避難を勧めることなどが明記されており、非常にすぐれた資料であると思います。中学校での啓発など、この資料を広く市民に普及し、市民自身が洪水時に自分はどこにどのルートで避難するのかなど、実際に考えていただく機会を創出していただくための取組みを強く要望いたします。
また、佐用町の豪雨では、町の職員が緊急招集を受けて軽トラックで水害対策に向かう途中、道路沿いの水路に荷台部分から落ち込んで命を落とすという痛ましい事故が発生しております。豊中市においても、災害対策本部設置に伴う職員招集時に市役所等に向かう職員が安全に到着するよう、職員の意識啓発をお願いするとともに、豪雨の現場で働く職員の命を守るライフジャケットの配備を提案いたします。
住民の避難経路途中の川や水路に転落防止柵などがない箇所については、私の近所にも晴天時でさえ車が転落したような水路があります。今回の佐用町の事故報道に接し、近隣住民は不安をお持ちです。安心・安全なまちづくりをめざし、積極的な安全対策を強く要望いたします。